2026年9月。
ドゥージェンと名づけられた台風25号は、三浦半島に甚大な被害をもたらした。
三浦半島では、横須賀市南部、三浦市周辺に特に影響が強かった。あまりテレビに映ることは少ない横須賀。長井で大雨による崖崩れの映像がテレビで放映された。倒壊した家と共に、死者、行方不明者を数えるテロップ。
横須賀でこのような被害が出るのは初めてだと、複数の地元民から聞いた。ここ近年の日本では、台風の数は増えていないが、大雨の降り方が変わったという指摘もある。スコールのような、突発的な雨がふりつづけた長月。気候変動の影響が目に見える形で出始めている。
被害があった長井に足を運んだ。横須賀に住んでいるものの、普段はあまり出向くことはない地域ではあった。〈ソレイユの丘〉へタイミーのアルバイトへ行ったくらいか。富士見町から、衣笠十字路まで歩き、バスで南下すること30分。このバスはいつも混んでいる。
電車が通ってないからだ。佐野町の歩いていて、すし詰めになったバスをよく見かけていた。きっと混雑するバスに乗り、さらに混雑する電車に乗り、横浜や東京方面に通勤しているのだろう。道路もほとんどひとつしかない。
この辺りは公共の移動手段が限られているため、災害があればライフラインが止まる危険性を孕んでいるのではないだろうか。
やすきは津山から神奈川への移住当初、横須賀ではなく三浦市に住んでいた。三浦から鎌倉へ自転車で向かう折、いつも長井や林の交差点のあたりを通っていた。自衛隊の駐屯地。市民病院。こちらで初めてみたジョナサン。電力中央研究所。弁当屋。葉山へ差し掛かる前の地域。大きな施設がいくつもあることから、雇用もあり、飲食店も多い。
流れるバスの窓からの風景。5年前を思い出す。あの頃、2時間かけて自転車で鎌倉へ向かっていた自分と逆方向へ向かっている。好きな鎌倉へ気軽に向かっていた自分と、違う自分がここにいる。バスの窓から、道端に壁が崩れているのが見えた。バス停を降り、見かけた場所へ向かう。

自然
横須賀の神社を巡っていて気づいたことがある。山の神様がよく祀られている。山を削って出来た住宅エリアが横須賀には多い。山岳信仰というより、山が崩れないようにお祈りするためなのだろう。津山は盆地だが、崖崩れは滅多になかった。
道に、農作業用に設置してある壁が落ちている。破片がまだ撤去されていない。幹が太い木、バケツ。鉄片。上を見上げると、崖崩れが起きていた。砂と土が混ざり合って、崖の下にある畑になだれこんでいる。ニュースではなく、この目ではじめて崖崩れを見た。自然の猛威というか、なす術がない、と感じた。





地元住民に話を聞いた。竹林のあるところで崩れやすかったらしい。一時的にだが、三浦方面への道もふさがれ、陸の孤島と化したという。
もう1か所、被害が大きい場所を教えてもらった。歩いて、そこへ向かう。白い革靴で30分ほど歩いた。
長井は農作地でもある。市街地を抜けると、突如、広大な畑が広がっている。秋の空に、まだらに白い雲が広がっていた。風がふわりと、体を突き抜ける。

街は、うごいている。海洋科学高等学校では入学説明会をしていた。町中華、パン屋、文房具屋、地元の網元による直売所。三浦から鎌倉まで抜ける県道は、ひっきりなしに車が往来している。地物の野菜を売る施設にも、たくさんの人が来ていた。畑では農家さんがトラクターにのって野菜の手入れをしている。子供たちが道路の脇で遊んでいる。
平常運転なのだけれど、二週間ほど前に悲しみがあった。町内で亡くなられた方がいる、この辺りはきっと、地域の結びつきが強いだろうから、ショックも大きかったはずだ。大雨により人命が失われた。この厳然とした事実に変わりはない。しかし時間は流れる。亡くなられた現場はどこかわからなかったが、空に向かって手を合わせ、祈った。
もうひとつの崩落現場に着いた。崖が削り取られたような跡に、大きなブルーシートが覆われている。こちらも、木やプラスチックの破片、残留物はまだ撤去されていない。泥の上に合板がいくつか敷かれて足場になっている。その下にある泥をかきわけて、まるで清流のように水が流れていた。
タウンニュースの記事では、農作地域の被害も激しかったという。去年に三浦半島のある農家さんを手伝ったことがあった。自然を相手にするということは、苦難を伴う。身をもって味わったことだった。夏頃にバイトをして、毎日、脱水症状になりかけながらキャベツの苗を植え付けた。今回ほどではないが、その時も大雨があった。農地の道が塞がったことがあった。大きな農地をいくつかの農家さんが共用しており、ひとつの道が塞がれると、その地域全体が困る。
Hachisでも、三浦半島の野菜を味わってほしくて、スパイスカレーの副菜として出していた。印象に残っている野菜は、カブだ。生食すると柿のような甘みがあった。最初に食べたときは、おどろいたものだった。三浦大根や、お隣の鎌倉野菜も有名だが、横須賀にもいい野菜はある。〈野菜の里 須軽谷〉にもいい横須賀の野菜が売られている。本庁エリアでは、LIVIN横須賀の西友に地野菜コーナーがある。今回の被害を契機に、離農が心配されている。間接的に、横須賀・三浦地域の野菜を買うことにより、援助をすることもできる。
あちらから求めない限り、手を貸しますよとボランティアに行けるわけでもない。長井はいい地域だ。〈ソレイユの丘〉の手前だし、ふと立ち寄るのもいいのではないだろうか。もし寄るのなら、まだ撤去されてない場所もあるので、崩れた場所には近づかずにお願いします。
