〈千里飯店〉の焼きそば

横浜・天王町。エデン横浜からの帰り道。

きゅうさんとよしさんと3人で横浜駅から京急線で横須賀へ戻ってきたところだった。時計の針は夜11時をまわろうとしている。

エデン横浜でキタタクさんと、さちこさんのピザとクラフトコーラのイベントに行った。十夢さんやりょうさんもいて楽しかったのだが、ピザがなぜだか食べれなかった。

自家製のクラフトコーラは飲むことができた。コーラナッツがつかわれていて、爽やかで美味しかった。店の参考にしようと思った。酒なしと酒ありが選べたのだが、勉強なので酒なしを選んだのだが、バーテンダーをしていたきりさんに「え!さけなし!?」みたいな感じでもう一度確認された。

ピザが食べれなかったので、きゅうさんがお腹がへったでしょう、と気を遣ってくれて、ご飯を食べに行くことになった。

横須賀観

横須賀中央の夜は早い。11時を過ぎると、食べるところも飲めるところも限られてくる。

中央駅ちかくの〈千里飯店〉と〈長城飯店〉は深夜まで空いているの助かる中華屋だ。聞くところによると、上町病院の夜勤に入る看護士さんが深夜に出前で注文するらしい。

そんなわけで、〈千里飯店〉に3人で入ると、ほぼほぼ満席だった。奥の座席にはB系の若者集団が20人ほどで占拠しており、他の席も飲みの締めに訪れたらしき人たちや家族連れで埋まっている。

きゅうさんはこの店に入るのが初めてらしい。テーブル席に案内されると、店をあちこち見回していた。

声を少し張らないと会話ができないくらい、店内は賑わっていた。〈カルダモンモン〉の帰り、高橋さんやひゅごくん、いわたP、スミーさんと〈長城飯店〉に寄ったときも、同じような時間帯で、混んでいたので2階に通された。あのときはパイコー飯を食べたっけ。

メニューを見て、やすきは焼きそばを頼んだ。数分後、テーブルに満月のような焼きそばの皿がとどいた。

〈千里飯店〉の焼きそば 900

やすきは外食であまり焼きそばを頼まない。理由は、自分でもよくわからない。焼きそばがイージーなものだと感じてるからだろうか。焼きそばこそ町中華屋さんの本領だというのに。

すこし声を張り上げながら、3人で話しながら食べた。会話の内容はよく覚えていない。たのしい時は、いつもそういうふうに、泡のように消えていく。きゅうさんは帰り道、やすきとよしさんの話を聞いて、楽しそうに笑っていた。

左隣の席では、男性1人と女性3人の組み合わせだった。男性が「逗子にキャバクラがあるか」という話で、座を盛り上げていた。どういう組み合わせなのだろう、この男性に求心力があるのだろうか、と考えていた。

店を出て、きゅうさんと別れ、よしさんと坂を登って歩く。上町は、もう開いている店はほとんどない。〈圏外書房〉さんの燈が灯っているくらいだった。静かな夜道を2人で歩く。

よしさんによると、左席の4人は、店が混んでいたので、男女のカップルと、女性2人が相席になったということだった。

あの柄の悪さが横須賀だと、よしさんは言った。そんなことはないと思うけどなあ、とやすきは返した。かつてのヤンキー感は話には聞くけど、2年半も住んで今日が初めてくらいだった。

横須賀で生まれ育った人と、よそもののイメージは食い違う。地元とは、そういうものだろう。愛憎。

遠い異郷の地で焼きそばを食べた帰り道。夜空には翳った下弦の月が輝いていた。その横を、きゅうさんがとスクーターで通り過ぎた。