湘南移住記 第229話 『hatisファミリー』

気が遠くなるような冬がすぎ、肌寒の卯月。月日の流れは、星の運行のように速く、遅い。

ちかごろは気分が高揚してきた。hatis AOが、回りはじめたからだ。

課題だった平日営業に、hatisファミリーがよくきてくれるようになった。目標の売上達成までスレスレのところがつづいている。

あとは、新規の方の来客が週末に集中しているので、平日にまで届くようになれば、バイトなしで生活ができる。健康を取り戻せる。

平日は8人が目標。あとすこし。

まだまだ平日がノーゲストの日も出たりするので、この2週間ほど休みなしに稼働した。さすがに、体の倦怠感が取れなくなってくる。休みがないときは、睡眠時間を多くとって回復する。

人間の躰が便利なのは、寝ると精神も肉体も回復するところだ。

とこにつく

体調がよくなれば、お店に向き合う時間がふえ、掃除も細かくできるし、提供する料理やドリンクももっといいものがだせる。

なにより、店を開けていると、日々がたのしい。毎日毎日、やりたいことをやって、人が集まり、素晴らしい時間を過ごす。時にゆるく、時に笑って、時に真剣に話し合う。

お互いの人生において重要なことを話す。そのタイミングが合致する。感情の重荷を分かち合う。過去の寂しさを手放して、次に進む。

ジョージアでゲストハウスをしているニコちゃんと、アメリカ帰りのエマさんとの出会いが大きかった。その前にもhiclyくんと〈calme〉のわかなちゃんにも言われたのだが。十夢さんにも解析してもらった。

共通して言われたのは、「やりたくないことをしないこと」。

やすきの場合、バイトや派遣のこと。今や生活自体が仕事になっていて、だれかが直接的に喜んでもらったり、楽しんでくれる。

共同体

津山の丹後山アパートメントに足繁く通っていたとき。そこには共同体ができてて、ぼくらはネオ家族と呼んでいた。

いっとき、訪れる旅人たちも含め、流動的な共同体だったけど、地域のコミュニティはあたらしい時代のあたらしい家族の形ではないかと思う。

いや、それはきっと昔から日本にずっとあったものだろう。今でも田舎では地域の共同体があって、野菜がとれたら共有して、お互いになにかあったときに助け合う。

岡山から東京圏に来て、つながりが希薄のように感じた。シティには地域のコミュニティが存在しない。マンションやアパートに住んでいて、隣にどんな人が住んでいるか知りようもない。

横須賀は大きな街だが、歩いているだけで人が話しかけてくれる。人の温もりが残っている地域だ。

一方、谷戸会を見てて思うが、コミュニティの数が圧倒的に欠けている。その原因まではわからない。

店を運営しながら、hatisファミリーを拡大していって、人と人とのつながりを取り戻し、地域を再興していくのが、やすきの役目だと確信している。幸運にも、同じ志を持つ仲間が集まっているので、心強く、実現も夢ではなく思う。