4月。逗子海岸。

春になっても、いささか寒い日がつづいていた。かといえば、突然に暑い日もあり、街に出ると、冬着の人、Tシャツで出歩いている人が入り混じっている。

新年度を迎え、卯月も、ようやっと半ばを迎える、暖かい日が出てきた。長袖で汗ばむくらい。このところ、〈Hachis〉の準備で疲れていたので、今日はオフにして、出かけることにした。

週一の休みが月曜日になる。しかも、今週は火曜日のバイトも休みだ。やらなければいけないことが目白押しなのだが、今日はひとまず脇においといて、逗子に出かけることにした。

横須賀の富士見町から、佐野町をこえ、JR衣笠駅へ。

いつものように切符を買おうとして、券売機にコインを入れた。ところが、足りないと機械が表示する。どうやら、運賃が値上がりしたみたいだ。中東の情勢が、ここまで影響を及ぼしているのか。

30分ほどして、朝の逗子駅。駅を降りて右側、商店街の方面を歩く。これから石油やエネルギーの供給が難しくなると、こうやって移動するのも気軽に楽しめなくなる世の中がくるのか。そう考えながら歩いていると、ふと看板が目に留まった。四川中華屋の、麻婆豆腐のランチだった。この間、鎌倉にある古民家を改装した四川料理屋の皿洗いのバイトに入って、厨房をのぞいた。スターアニスやシナモンの香りが漂っていて、ここの料理は立体的なのだな、とわかった。そのお店はランチでも1万円するが、ここは1500円。なんだか安い気もする。

看板を通りすぎると、「美味しいですよ」と声をかけられた。キャッチか。うぜえなと頭を一瞬よぎったが、ちがう。隣の美容院の方が教えてくれたのだ。早合点を恥じ、逗子の親切心に「ありがとうございます。食べにきます」と瞬時に反応した。こういうささやかなふれあいが、旅の醍醐味だ。心が洗われる。

久木へ向かう途中の踏切。こんもりした山がある。

散歩する犬にわんわんと吠えられながら、久木の〈オーブンズ〉にたどりついた。家から珈琲をカップに入れて持参してきたので、サンドイッチを買い求めに行った。

久木町内会だより。社会見学回のレポート。

静かな住宅街だった。横須賀の空気感とはまたちがう、のどかさ。地図アプリに表示されたところ行きすぎて、〈オーブンズ〉に到着。

入口に、6名しか入れない制限の旨が書いてある。コロナの名残か。整然とした店内に、パンがいくつも並んでいた。葉山の紅茶屋さんの紅茶も置いてある。原価高で、心苦しくも値上げする、という書き置きがあった。

白い紙袋にパンを入れて、逗子海岸へむかった。

白い逗子海岸

ああ、ひさしぶり。おもわず口についた。白く広がるような海原。由比ヶ浜や森戸海岸とは異なる、明るい雰囲気。やすきは逗子のファインなところが気に入っていた。

貝殻のシートにこしかけ、パンを口にする。珈琲と共に。

海をながめていると、溜まっていた疲れが空に解き放たれるようだった。波の音が心を透明にしていく。足元の貝殻をひとつずつ手に取る。紫と乳白色。オレンジ。形や色に個性がある。自然もそうなのだから、人間の生き方も多様であっていい。白い紙袋に、お気に入りの貝殻をしのばせた。

家に帰り、半斤の食パンでサンドイッチをつくった。ブルーチーズのディップを塗って、からからに焼いたマッシュルーム、豆苗とエシャロットのレモンドレッシングサラダ、三浦大根の漬物。

この日の気分に合いそうな曲