〈みのり屋〉のごぼうサンド
横須賀、上町。かつての勢いを失った商店街が、開拓され、息を吹き返している。カフェ、雑貨屋、古着屋など、ここ2、3年で新しい店舗がふえた。横須賀でも注目のエリアだ。
だが、うわまち病院が移転したことによって、人通りが減った。さまざまなイベントを取り行われるなど、多くの試みがなされている。
新興店も目立つが、昔ながらのお店も残っている。しかし、店主の高齢化などの原因によって、閉店が増えてきた。
昨年も、老舗の和菓子屋さん、写真屋さんが惜しくも閉店。通りかかると、つい買ってしまったコロッケ屋も、建物ごとなくなってしまった。諸行無常の風に街は流され、風景は変わりゆく。

四年前、やすきが岡山から神奈川に越したとき。三浦から横須賀へ、自転車でよく通っていた。新しい家をさがすためだった。白石町から、南下浦を経て、三浦海岸を走る。海沿いを自転車で往く気持ちよさを、初めて知った。あれは暑さの残る9月だったろうかか。
物件を見て、あたりも暗くなって、横須賀から三浦へ帰る。平坂をのぼって、上町の商店街から衣笠まで走った。まだ、上町という名前すら知らなくて、素敵な街並だと思い、写真を撮ってXにアップしたら俄かにバズった。横須賀の人は、横須賀のことが好きなのだと知った瞬間だった。あれが、やすきと横須賀の最初のコンタクトだったのだろうか。
いつまでも
時代の移り変わりもあるが、軸を貫き通して、ずっと商売を続けられているお店もある。かどっこにあるパン屋〈みのり屋〉さんもそのひとつだ。
昭和25年創業。第二次世界大戦が集結し、5年が経過。4回目となるサッカーのワールドカップがおこなわれ、ウルグアイが開催国であるブラジルを破るマラカナンの悲劇が起きた。
その頃の横須賀は、朝鮮戦争の特需により、活気を取り戻しつつあった。マッカーサーの指令により、警察予備隊が組織され、旧日本軍の施設があった久里浜や武山が訓練され、機能し始めた。ドブ板通りでは、バーやキャバレーなどの店が栄え、花を咲かせていた。
それから71年後。上町を通りかかったやすきと〈みのり屋〉は、ふとしたことで、出会うこととなる。

そのころからサンドイッチは売っていたのだろうか。きっと、売っていたに違いない。味も、そこまで変わっていないだろう。
国産のごぼうをつかったサンドイッチがめずらしかった。シャキシャキして、歯応えがある。
上町商店街の真ん中。〈みのり屋〉はそこにある。日本におけるドイツパンの発祥の地である。横須賀に出かけて、ノスタルジーを感じよう。
SHOP INFORMATION
ベイクド みのり屋
1950年創業、横須賀・上町の坂の上で愛される「ベイクド みのり屋」は、扉のない開放的な店構えが魅力の老舗 。 28センチの名物コッペパンや健康を考えた玄米食パンなど、三代にわたり守り抜かれた伝統と新しさが共存している 。 地域に寄り添う実直なパン作りは世代を超えて支持され、日常に幸せを添える横須賀の歴史そのものと言える名店 。
● 神奈川県横須賀市上町2丁目18