いとうせいこうが細野晴臣との対談で、「50代になったからこそできるラップがやりたいんですよね」。と語っていた。NASやEminemもTha Blue Herbもその年齢に差し掛かっているが、未だにヒップホップの最前線にいる。ある意味、誰も切り開いていない場所で、1番のフロンティアかもしれない。
孤独の交差
『Rewind』。巻き戻し、という意味。このMVが発表された2月2日は時間の逆戻りを示す水星逆行中で、まさにぴったり当てはまっている。しかも風の時代、Re : wind。
MVはMacchoが山中にこもり、古屋で木を切っている描写から始まっている。降神の志人も現在は京都で木の仕事をしている。
私の友人も鳥取で木の仕事に携わっていて、見学させてもらったことがあるが、かなり危険な仕事だ。高いところに登らないといけない。岡山の田舎のほうでも、木の仕事で亡くなった方がいる、という話は何回か聞いたことがある。
無能の人 人と遠い距離 秘境の奥に放浪者 火を焚き 巣を張り 一人きり 演技かもわからないが、MV中のMacchoは動画の扱いにも慣れてて、木を切る様が日常になっている。こういう仕事をやっているかわからないが、人と距離をとり、孤独に自らを顧みる心境に達しているのだろう。 そこに、ZornがMacchoを尋ねてくる。帽子をあげる仕草がいい。 Zornも、ラッパーとしての成功の引き換えに家族との幸せを失った。近頃は孤独の心境を歌っている。立場は違う男の孤独がリンクする。
遠くのものをみようとして 近くにあるものを見落として 数えた紙幣 家族が犠牲 そんなの惨めで全く意味ねえ
私が味わったことだった。遠い理想を追うことで、近くにあるものを見落としていた。幸せがどこにあるのか。人間は考えなくちゃいけない。
20代のフレッシュなラッパーが次々に現れるが、この心境を与えるのは、時間が必要になる。
たしか和歌山の山奥でひっそりと創作しているEvisbeatsのビートも、なにか交わるところがある。
Kick The Can Crewの新曲
Kick The Can Crewがニューアルバムをリリースするらしい。先駆けたシングルが発表された。『Boots』。
こちらも、過去を振り返った曲。ポップなんだけど、哀しい。
KrevaとMacchoはdisりあっとことがある。しかし、両組ともラップが上手い。30、40代にしか出せないリリックだ。
日本のヒップホップも歴史が積み重なってきて、重みが増している。今が1番おもしろい時期だ。