2週間にわたり、赤江かふおさんによる即興アクリル展『よこすか、まよなか、ストーリー。』がhatis AOにて開催された。
赤江さんは、今回、初めてアクリルによる即興画に挑戦した。自分が、アクリルを使うのか、と自身でも感じたのだという。
夜、眠れないとき。ある人はお酒や薬で夜を越えようとする。赤江さんは筆をとり、絵を描くことによって、眠りを獲得していった。
心に堆積した心象を風景に落とし込んで、色彩が躍る。そこに赤江さんの喜怒哀楽、沈澱した深い感情が浮かび上がる。溟いものもあれば、華やかなものもあり、懐かしさもあった。
物言わぬ抽象だが、ここまで自分を顕にする芸術はないのかもしれない。
赤江さんは京都出身で、10年前に横須賀へ移住した。今回の展示の作品も、横須賀の景色が色彩と共に描かれている。ある種のコラージュとも呼べる。
展示中は、市外のお客さんが少なかったから、横須賀に生まれ育った人が多く見ただろう。異郷の絵を、故郷の人たちがどう捉えたのか。赤江さんの表現が深く突き刺さった人もいるはず。
赤江さんは横須賀が気に入っている。京都生まれの人が住める街も珍しい、奇異の目で見られない。混沌。ベース(米海軍基地)があるからか、異文化を受け入れる懐の広さがある、と繰り返し話してくれた。
縁が広がる

展示中はhatisの集客が芳しくなく、申し訳ない気持ちになった。それでも濃いご縁ができた。クリスは赤江さんとすごくマッチしてくれて、絵まで買ってくれた。2人のアートに対する感性は似ていた。
〈MagYoko〉に赤江さんが行き、すこぶる印象に残ったようで、〈MagYoko〉のお客さんが何人か来てくれた。上町界隈では、話題の人となっている。
赤江さんのご主人と話したのだが、作品はもちろん、赤江さん自身がアートだった。ファッションも、作品を着飾るように着こなしていて、ミカさんの感覚に似ていた。アーティストとはこういうことか。自身そのものが作品。
話も面白くて、何気ない会話の中にも、すっと重要なことを言う。
アートの在り方でも、もっと日常にあってもいい、そういうことを話した。横須賀は日常の街だから、ギャラリーだけではなく、スパイスカレー屋に絵があってもいい。
赤江さんは、hatisには霊感持ちと、博識な人が集っていると言ってくれた。やすきから見ても、赤江さんを訪ねてくる人たちはみなカルチャーに造詣が深かった。そう言った会話は、もっと横須賀にあってもいいと思っていた。
展示が終わって2日後。絵の撤収の日に、いいご縁が重なる日があった。〈満昌寺〉さんが予約をくれていて、大竹さんという哲学家を連れてきてくれた。本も出版していて、三浦海岸で発達障害の子どもたち向けの動きを始めようとしていた。
赤江さんに連絡すると、すぐ来てくれて、いろいろ話しがつながっていった。ほかにも、いくつかのご縁が重なって、賑やかなhatisが戻ってきたようだった。
東京で出来なくて、横須賀ではできることがある。藪木さんや赤江さんの展示を見て、そう確信した。
今回の展示で、横須賀が赤江さんを知った。これから、アートを通じ、地域社会で活躍していくだろう。