〈farbiger Alltag〉のロッゲン
横浜市金沢区、富岡。いまは埋立をされ、工業地帯になっているが、かつての富岡東は海岸線がつづく風光明媚な土地だった。八景と同じく、富裕層の別荘もあったという。
やすきにとっては働く場所で、タイミーで鳥浜駅や、南部市場、幸浦の現場があるときは京急富岡まで出ていた。そこから30分ほど歩く。タイミーは交通費が少ないため、シーサイドラインの切符代を浮かすためだ。
京急富岡駅を降りるとすぐに京急富岡ストアがあり、ラーメン屋さんやドラッグストアなど、商店街がある。そこから歩いて行く。朝は、金沢総合高校の学生たちがひっきりなしに登校していた。




しばらく行くと、富岡の行政センターがあり、裏手に流れる富岡川と合流して、湖のような場所がある。湖面に団地の風景が映って、失われた海岸線の美しさを表しているかのようだ。休みの日には、舟のラジコンで遊んでいる人たちの様子が見れた。やすきは、ここに早めに来て、ベンチで腰掛けて休むのが好きだった。

この街のかたすみで
県道16線からひとつ奥の中通りに、小さなドイツパン屋さんがある。〈farbiger Alltag〉だ。「素晴らしき日常」という意味なのだと、眼鏡の女性店長に教えていただいた。1年ほど、ベルリンを中心にドイツに滞在した経験があるとのことだった。

ドイツパンの特徴は、ライ麦をつかって、酸味がある。紀元前、ライ麦はもともと、小麦のそばに生えていた雑草とされる。バルト三国やポーランド、ドイツなど、寒い地域で生育でき、ゲルマン民族に好まれた。酸味が特徴。

ロッゲンという黒パンを買い求めた。このパンで、サンドイッチをつくってみることにした。

発酵させた玄米と甘酒、麹のクリームを塗り、赤玉ねぎのライムピクルスに、マスタードとベーコンをはさんだ。
ロッゲンの酸味と野菜と絡み合って、複雑な味わいがあった。独特な舌触りが喉を潤ませる。
横浜の片隅で、ドイツと出会うことができるとは。他のパンもオーガニックにこだわっているので、足を運んでみるのも手だ。
SHOP INFORMATION
farbiger Alltag
京急富岡駅から歩いて五分。業務スーパーのちかく。オーガニックのこだわり、卵は<井上農園>の平飼 い有精卵を使用。
● 〒236-0051 神奈川県横浜市金沢区富岡東5丁目14−17