横須賀。

12月に入ったばかりの、冬晴れの日だった。富士見町から衣笠病院に向かって歩いている。山を切り取ったかのような横須賀は、道がとても複雑に入り組んでいることが特徴だ。さながらミノタウロスの迷宮だ。ただそこには、怪異の代わりに、穏やかさがある。短くなってしまった秋の名残が、道端の落葉に宿っていた。

衣笠に着くと、階段を降りて、地下道につながっている。久郷、商店街、佐野方面と、三か四方向に別れているのだが、、いつも迷ってしまう。何回も来ているはずなのに。なぜだろう。ミノタウロスの迷宮はどこまでもつづいているのだろうか。

地価の迷宮を抜けると、木内アキさんのZINE、『ヨソモノ』vol.1にも登場した衣笠商店街にたどり着く。年配の方で賑わっている。商店街の中央にあたりに位置する<鈴木水産>の前を横切る。このお店では、甲高い声のおじいちゃんがいつも声をはりあげていて、通りがかるたびに、その頑張りに胸を打たれていた。つい、その声に導かれて魚を手に取ると、その魚の調理の仕方を優しく教えてくれた。引退したのか、いつしかそのおじいちゃんもいなくなった。知り合いだったわけでもないが、胸につかえるような寂しさがあったた。

衣笠のパン屋

商店街の途中、花屋さんを境に道が二股にわかれる。カレー屋さんや三崎産のマグロを売る店と、から揚げ屋があるほう。後者の道をえらぶ。そこに、<ファリーユ>というパン屋がある。

中に入ると、さまざまなパンがならんでいる。家族経営の店だろうか。店内に、安心感が充満していた。

明太ハムチーズサンド、タマゴサンド、ピリ辛チキン、タマゴサンド、ロースカツサンド
名物のアップルパイ(ホール)

アップルパイのホールも気になったが、サンドイッチを手に取る。明太ハムチーズサンド。購入して、外のベンチに腰掛けて食べた。サンドイッチは二つあって、片方に明太マヨが、もうひとつはハムチーズ。見たことのない構成だった。ふたつ別れて表現しているのか。明太マヨのあとにチーズを食べると、なんとも言えない余韻が残った。