岡山から神奈川県へ移住して4年になる。最初は横須賀ではなく、三浦に越して、神奈川で店を開くべく、お金を貯めるためにバイトに精を出していた。
最初の夏は、ホテルとマグロ丼屋さんの掛け持ちをした。朝5時に起き、ホテルの朝食の仕事を昼までやって、マグロ丼屋のランチをこなして、ホテルへもどってディナーのバイキング。帰ると夜11時、みたいな生活を1ヶ月やった。
結局、三浦では保健所の許可がおりず、横須賀へ移ることになる。夏につくったお金は、横須賀で店を開くための資金に持ち越した。
その前に、ちょこちょこ単発のバイトをしていた。神奈川に来て、初めての現場が横須賀だった。後に住まうことになる県立大学駅が最寄りで、因縁めいたものがあった。あの頃は右も左もわからず、安浦の公園で不安になっていたものだった。
三浦に住んでいたころ、「ここには長くいないだろうな」と、不思議に予感めいたものがあった。横須賀にくるのも、運命だったのだろうか。
うみかぜとともに

うみかぜ公園は県立大学駅から徒歩10分、海際にある公園。この公園がある辺りは平成町といって、埋め立てによって平成初期にできた街だ。ソテツが並んで、大型商業施設がいくつかと、大型スーパーがある。
神戸から遊びに来た友人が、スーパーのサイズ感がアメリカに似ていると言っていた。横須賀にアメリカ人のためにつくられたエリアということは、想像に難くない。まるで異国かのような景色は、横須賀ならではのものだ。

近くのコンビニエンスストアで、珈琲を買って、木陰の白いベンチに腰掛けて、海を眺める。風が自分の中へと透き通る。考えていることが後ろに吹き飛んで、風景と自分が同化していく。
首をもたげると、空がどこまでも青い。〈hatis AO〉は、横須賀の空の海の青からとった。
広い敷地内は、平日でも朝からグランピングをしている人たちがいる。黄色や緑のターフ。三連のベンチの横には、釣り人たちが海に竿をたらす。
すこし離れたコートには、バスケゴールが二つある。1 on 1を楽しむ人もいれば、個人練習に精を出すひともいる。上手な人は、練習を見ているだけでもたのしい。
スケートパークには、若い層から壮年まで、楽しんでいる様子が見える。今日は町田から来て練習してるんだ、という会話が聞こえてきた。
買い出しのついで、うみかぜ公園で毎朝、空白の時間をつくるルーティンになった。
過ごしているうち、あることに気づいた。逗子海岸や森戸のような気持ちよさがあることに。移住者同士でよく話すのだが、三浦半島の気候はとても過ごしやすい。それだけで価値があるほどに。湘南にも負けない環境だ。
9時前になると、店のオープンと同時に動き始める。オープンに向けて、1日が動きはじめる。