湘南移住記 第252回 『今泉台』

5月。日中は暑いが、曇ったり、朝夜はまだ肌寒い。

店に専念して3ヶ月目に突入、4月から週6営業をはじめた。3月から3万円ほど売上は上がったものの、売上目標まで微妙に足りておらず、ついにタイミーでバイトを入れた。およそ2ヶ月ぶり。その間、ほとんど横須賀に、hatisにいたということになる。

平日のランチもすこし忙しい日も出てきたが、穏やかな日々だった。とはいうものの、週6営業に体を慣らしていく作業が必要だった。〈めい鍼灸院〉でお灸をしてもらった。めいさんには、日々の習慣について相談している。減らした夜のランニングを、徐々に増やしていっていいかもしれない。

水曜日。現場は鎌倉の今泉台。北鎌倉駅から線路の脇道に逸れていくと、幻想の森林に入っていく道がある。喫茶店がいくつかあって、うねった坂道を登っていくと、今泉台に着く。

コンビニが一件もない、山の上の閑静な住宅街だった。地図アプリでこのエリアを見ると、中心を放射線を描くように道ができていて、あたらしく、計画的につくられた街ということだ。

昼休み、辺りを散策していた。喉が渇いたので自動販売機を探したが、見当たらない。灰色のキャップをかぶった壮年の男性を見かけた。

「こんにちは。このあたりに自動販売機はありませんか」

とやすきは訊ねた。

「向こうの郵便局まで行かないとないね」

と男性は答えた。御礼を述べて、やすきは郵便局へ向かった。

郵便局の近くには、商店街があった。「サカナヤマルカマ 3周年」という看板が出ていた。この店のことを見かけたことがある。そういえば、ネットの記事で読んだのだった。鎌倉の山の中の商店街に、若い人が魚屋をつくったと。あれから、3年の月日が経ったのか。hatis AOは今年の10月で3周年になるから、店として同期ということになる。

朝10時から夕方の4時までの家の片付けのバイトだったが、ひどく疲れた。元銀行員らしき人の家だったのだが、20年以上も放置され、壁も床も腐っていて、モノに溢れていた。夜逃げしたとか、理由あって部屋や家を放置した人は、きまってモノを溜めている。だから自分も、モノを手放していくように気をつけなければいけない。

鎌倉湖畔通り

整理

アルバイト、週一とか、タイミーに数回入らんといけんかあと悩んでいた。アベレージがもうすこし上がるか、飲み会が入ってくれれば解決するところである。タイミーは、今の状況だと、店の方が利益が出るかもしれないので、損得としても、あまりよくない。

今泉台に行った翌日、5月初の営業日。

三浦に移住して、整理整頓アドバイザーやライターで生計を立てている方が店に来られた。店に対してアドバイスをいくつかくれた。

①店を綺麗にして、仕上げれば、メニュー、置いてあるモノの価値が上がる。

②アルバイトをするにしても、店と、あるいはこれからしようとする事業に関することでないともったいない。

③嫌なことは断る。自分のやりたいことをすれば、しなければいけない仕事の量がへり、利益があがりやすい。

その方も、1週間に2回しかシャワーを浴びれないほどの時期を経て、今の結論に至ったらしい。合理的な思考の人だった。参考になった。