店を初めてから、自分の好みだけではなく、店の雰囲気に合うような音楽を探すようになった。心地よく鳴って、違う組のお客さん同士の会話の間に、やわらかい壁になってくれるもの。窓からの景色に合っているもの。時間軸にゆっくり作用するもの。
ボサノヴァをはじめ、ブラジル音楽、サンバやバイーアもいれる、アンビエント、ジャズ、インストのヒップホップ、ローファイ、R&B、フォークかな、かけやすいのは。ECMを基軸に、クラシック、現代音楽もたまに。また、さまざまな要素が入り混じった音楽。分類しにくい音楽。
大袈裟でなく、ドラマチックでなくていいから、音楽が空間に、淡々と流れていて欲しい。
少数派だけど、BGMがよくなくないからという理由で行けれない店が多い、というお客さんもいる。やすきの選曲が苦手な人もおろうが、それはそれでしかたない。
神戸にいたころ、元町のジャズ喫茶〈Jamjam〉によく通っていた。珈琲を一杯で、素晴らしい音響でジャズが聴けた。珈琲が、本当に熱かった。あれも、席に長く座れるための配慮だった。
不思議なことに、店を出ると、体が軽くなっていた。いい音響は、掛け流しの音声のように、気持ちよくなって、体を解放してくれる。
〈hatis AO〉のスピーカーは、DIATONEのDS-261。鎌倉で働いていたとき、同僚の方に譲っていただいた。左の高音が鳴らない。1975年に発売されたものだけれど、2024年のいまでも、hatisでしっかりと仕事してくれている。
やすきは、アルバム単位で音楽を聴く習慣なので、hatisに合いそうなアルバムを紹介する。
『Yirinda』 / Yirinda
オーストラリア・フレーザー島の先住民族であるブチュラ族。彼らは、この島を楽園と呼んでいる。歌い手は、青い淡水湖のあるこの島で生まれ育った、FRED LEONE。コントラバス奏者・SAMUEL PANKHURSTがプロデュースしたアルバム。
アボリジニ言語による歌は、静謐な響きを携えている。時間感覚もゆっくりで長くて、hatisに合っている。2024年作。
『Ghost』 / Green Assasin Doller
舐達磨を支えたビートメイカー、グリーンアサシンダラーのビートテープ。毎年、ビートテープをひとつリリースしているが、今回はシティポップのサンプリングが多かったかなあ。田我流の藤沢を題材にした作品に似てる。いつもより華やか。