エンド&スタート

怒涛の10月だった。ここ数年で一番忙しい夏と秋が終わり、背負った荷物をようやく下ろせる時が来た。
始まるまでは正直家族内の様々なことが重なりすぎて「無事に出展できるのか」とても不安で仕方なかったが、友達や生徒さんや、新しくご縁が繋がった方々のお陰で何とか終了することができた。皆さんの応援やご支援があってこそ成し遂げることができたと思っているので、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。

私一人ではどうにもならなかった。
心と体がバラバラになり執念だけを糧に動いてる状況だったからこそ、支えて頂いた皆さんに何度でもお礼を伝えたい気持ちでいっぱいです。

「終わらせること」

展示とイベントのWコンボを終えて最初に感じたのは、私は「始める」ことよりも「終わらせる」ことの方を重視していること。もう少し踏み込んで言うと「終わらせた上で、そこからまた始める」ために順序を守って事を片付けて行きたい節がある。ちゃんとキリよく風呂敷を畳みたい。
終わらない旅も良いけれど『終わり良ければすべて良し』とも言うし、そもそも私は幼い頃から『生きて死ぬとはどう言うことなのか』が一番興味のあることなので、ある意味その考えに至るのは自然な気もしている。大切な人たちとの別れを通じて、時間が有限であることを嫌というほど知ったからこそ、馴れ合いやダラダラと時間を過ごすことを嫌うし、だったらいっそ断ち切ってでも然るべきところに着地させたい欲が強いんだと思う。

その点では今回のイベントは自分の中では及第点を出してあげられる結果につながったので良かったかな。
勿論反省点もあるけれど、終わらせることの反対は「意地でも続けること」だと思うから、年始に掲げた目標「能登への義援金を総額10万円寄付する」は達成するまで続ける。そして達成したあとも支援は継続的に続けていく。

ちなみに目標の10万円まで残り10,560円に来たので、もしかしたら年内に達成できるかもしれない。頑張る。あの理不尽な災害に私は負けたくない。

「穏やかな幸せ」

前回投稿した『私とファッション』で書いた「ちょっとしたパーティー」を終えたあと、閉店後の店内でみんなとつらつらと話していたときのこと。みなそれぞれに悩んだり考えたりするのを私は聞いていた。そして夜更けに帰宅したら、夢の中で話の続きが再構築されて私の脳内で再生され始め、曖昧だった思いが輪郭を帯びて確信に変わった。

「ああみんながそれぞれに幸せならそれで良い。例え私がいてもいなくても、むしろいなくても幸せで過ごしてくれるなら、これ以上に穏やかな幸せはないな」

そう心から思った。それが2番目に思ったことだった。
私がいないと成立しない幸せならば、私の死後、遺された人たちは幸せじゃなくなってしまうのか?
別に死ぬ気は無いけれど、私がいなくなることで相手が不幸になる幸せは嫌だ。勝手に幸せになれば良いし、なろうよ。
それがもしかしたら「自立」ってことなのかもしれないと思い至っている。

足跡を辿る

展示を通してたくさんの人たちと交流して意見を交換し、様々な考えを知った。新たな視点も知った。ただ新しく得た知見をまだ私は咀嚼しきれていない。そして喧騒を離れて一人静かに内省する時間が欲しかった。なので考えの整理やそれらの取捨選択をするために一人旅に出ることにした。私のルーツを辿る旅。


ちょうどいまJR東日本が「どこかにビューーン!」というキャンペーンを行なっているのも後押しになった。

『せっかく行くなら祖母との思い出の地〈中尊寺金色堂〉に行きたいので一ノ関駅が良いです、お願いします、一ノ関一ノ関いちの…』と強く念じながらクジを引いたら、本当に行き先が〈一ノ関駅〉に決まった。思わず叫んだ。夫には「その念力が怖い」と言われたが、確かにここぞの時の勝負運みたいなのはちょっとあるかも。あまり調子に乗ると怖いので、きっと「今年よう頑張ったな」って誰かからのプレゼントかもしれないです。


行き先が〈一ノ関駅〉に決まった証拠スクショ


以前投稿した『嘘と虚栄 その2』に書いた母方の祖母は、賢い人で歴史、特に日本史が好きな人だった。
ただ祖母はあまり身体が丈夫ではなかったのと、店番と、畑の世話もしてよく働く人だったので、私は一緒に外出したことはほぼ無い。でもそんな祖母が唯一自ら「私も行きたい」と言ったのが〈中尊寺金色堂〉だった。

そして私が1歳の時、祖母を連れて私たち家族と一緒に〈中尊寺〉に行ったことがあるらしい。
無論私は幼すぎて残念だけれど記憶にない。
ただ同行した長姉によると、祖母はひどく乗り物酔いし易い体質だったので、自分の店にあるありとあらゆるミント系のガムを持参し、常に頬張りながら片道2〜3時間の距離を耐えて辿り着いたと聞いた。普段自分のことより他人を優先する祖母が初めて言った自己主張だったのでは。おばあちゃんの目に奥州藤原氏の栄枯はどんな風に映ったのだろうか。

一ノ関に行きたかったもう一つの理由、それは〈金色堂〉の柱に施された螺鈿が平安時代の漆芸技法が詰まった結晶だから。本では断面図や技法、模様の構成を見ているけれど、それを自分の目で確かめたい。それに美術芸術と宗教は切ってもきれない仲で、浄土思想を知る上でも、「百聞は一見に如かず」でその場所に流れる空気はそこに行って初めて分かるものだろうし。

というわけで来月は祖母の足跡と、漆の足跡という二つのルーツを辿る旅に出る。どんな出会いや再会があるだろうか。

今回のおまけBGM

今回のタイトルは「ループ&ループ」の一節より。
終わらせないって意味ではこっちも好き。本当はライブ版のイントロだけで2分近くあるVer.がより好き
「終わらせることから始める」のを大切にするキッカケになった曲。ちなみにXのアカウント名がFIRST BEGINNINGなのはこの曲にちなんでいる。
このMVに何度勇気をもらっただろうか。