2024年の冬。
横須賀の伝統あるライブハウス、〈Yonger Than Yesterday〉。その歴史が動こうとしている。
水面下で進行していたプロジェクト、〈カルダモンモン〉がついに姿を見せた。
〈カルダモンモン〉の全貌はわからないまま、告知がされ、出演陣が発表された。わかっているのはスパイスと音楽のイベントだけということ。
この日、いったいなにが起きていたのだろうか。
予感

去年9月。横須賀市某所に呼び出されたやすきは、椅子に座って、プロジェクトの話を聞いていた。直感で、これは大きなムーブメントになると感じた。一も二もなく、参加する意志を伝えた。
その時は、スパイス料理を担当することになった。
〈カルダモンモン〉の方が立ち上がりは先だったが、〈横須賀コーヒーフェス〉も並行してプロジェクトは進んでいった。
〈横須賀コーヒーフェス〉の次の週、同じ場所で〈カルダモンモン〉が開催されることも運命めいていた。この2つが横須賀の起爆材になることは、明らかだった。
横須賀に移住して2年。この街が持つポテンシャルとオリジナリティには驚かされるばかり。しかし、それを知ってもらうためには形にする必要がある。
イベントという形がわかりやすい。人が集い、喜び、笑い、楽しみ、つながる。この2つのイベントは、2024年横須賀のクラウチングスタートとなる。
イベント当日。やすきは体調をくずしていて、スパイス料理担当を〈ぼくとつキッチン〉にバトンタッチした。
〈ぼくとつキッチン〉は埼玉に住むいわたPのパートナーであるひゅご君だ。イベントのフライヤーに記載するので、名前を決めてほしいと送ると、〈ぼくとつキッチン〉とした。
急な変更があり、開催の1週間前に頼んでいた内容と変わったが、対応してくれた。その結果、素晴らしいスパイス料理が出来上がった。
オレンジとカルダモンモン、チョコレートを合わせた一皿。爽やかで、華のあるスパイス料理だった。
YTYの入り口付近のテーブルに料理をおいて、入場者全員に配布した。オレンジとカルダモンの香りが白雪のように舞う。
芳香は、人間に情動をもたらす。心地いい香りがこの日のイベントの印象を変えたはずだ。自律神経をやわらげるから、音楽の聴こえもよくなる。
やすきは、スパイスと音楽の可能性を確信した。この2つの組み合わせは、まだ誰も体験したことがないなにかを引き起こす。
これを突き詰めていくと、横須賀にあたらしい文化をつくることができる。
東京ではなく、地方から発信をする。これからは中央ではなく、個をもった地方が主役の時代だ。その皮切りが横須賀なら、時代の象徴になれる。
素敵な一夜

ライブは、スパイスガールズ、Eddie Santa Klaus、藤代×灯織のパフォーマンスがあり、メインアクトにイチノイー、ゲストに心芯弦奏!!。
やすきはこの日、まだ体調が万全ではなかったため、舞台を後から見ていた。〈ぼくとつキッチン〉をいわたPと手伝いながら、イベント全体をオペラのように見回していた。
ステキな一夜だった。来場者の方、みなそう感じたのではないだろうか。
料理を〈ぼくとつキッチン〉にタッチしたが、それで良かったと心から思う。ひゅご君のスパイス料理がイベント全体にマッチして、相乗効果としてこの一夜を飾っていた。
来客は、予定していた数を上回った。準備していた料理が足りなくなって、追加の買い出しにひゅご君と同行した。話しているうち、食に対する価値観が似ていることに気づいた。
彼にはセンスがある。いまのところ料理は趣味のようだが、本気で取り組むことを勝手に期待している。すごいことになるし、多くの人を喜ばすことができるだろう。
灯織さんのライブをはじめて拝見したが、心に残った。しかも、心に残った歌詞が来ていたスミーさんと一緒で、それも上がった。「生きて」というメッセージの曲。
もしかして、〈カルダモンモン〉自体が、そういうメッセージを含んだものにあるかもしれない。
日々は苦しくてうまくはいかないが、たまに集まって、スパイスを糧に音楽を楽しめば、こんなにいいこともない。限られた人生を楽しんでいこうという、きわめて高次な愛が感じられた。

hatisファミリーからは高橋さんとかめ吉さん、〈マグヨコ〉のようこさんもいらっしゃっていた。
〈カルダモンモン〉は今後も継続して行われる。全貌は、これから明らかになっていくだろう。イベントから生まれたスパイスガールズは他のイベントにも出演する。これから大きな拡がりを見せるだろうから、みなさん、ぜひチェックされたし。