佐野町の〈SPECIALTY COFFEE BEANS No.13〉がオープンから1周年を迎える。1月21,22日は記念に特別な珈琲豆を提供。ECではすでに完売しているようなので、実店舗に足を運んで祝いに行きましょう。
夢の境に

おとどしの秋。不動産屋さんから、私が内見した佐野町の煙草屋の跡地は、私とはべつに珈琲をやりたい人がいると聞いた。
結は富士見町の古民家を選んで、煙草屋の跡は〈No.13〉になった。もし、あの時、私が煙草屋の跡を選んでいたらどうなっていたのだろう。
限られた選択肢しかなかった上で、振り返ると、私は富士見町でよかったなと思うようになった。移住を決めてこの2年間、唯一、私が選ばなかったことが、結果的に良かった。
鎌倉の常盤のような、静かな場所で働けたらいいな、と想っていた。海がない盆地にいたので、海の近くに暮らしたい、という指標だったが、求めていたのは山だったのだろうか。
先週に来られた鎌倉のお客さんに、この辺りは鎌倉に似ていますね、と言われ、ハッとそのことに気づいた。
だから、この選ばなかった選択は、結果的に良かったのだと思う。来るべきして来る、というか。
自分が選んだことが、他人の人生に大きく影響を及ぼしていく。
野口さんも、店を持つ、という大きな選択をした。夢を叶えた。私も、大きい決断をした。夢の境に、珈琲があった。
過程

店を開いてから、〈No.13〉には夜に行くようになった。いつからか、〈No.13〉の夜の常連組のようなものが出来上がってきた。佐野町周辺に住んでいる人が多い。
もし、私が煙草屋を選んでいたら、この空気が出来上がることもなかった。そう考えると、いまあるこの空間や次元は、すごく流動的であるということだ。物事、という風に置き換えるとわかりやすい。
珈琲好き、というだけではなく、家の近くで、夜に珈琲が飲める、という理由で来ている人もいるだろう。言い換えると、お店が地域に馴染んできているとうことでもある。
野口さんと開店前に、浅煎りが横須賀に根付くのか、と話し合ったことがある。それは杞憂でしかなかった。1年経って、〈No.13〉の珈琲に違和感を感じている人はいないだろう。
横須賀は港町だけあって、未知の文化を歓迎する傾向にある。
むしろ、お客さんが育っている、と感じるようにもなった。野口さんの情熱の賜物だが、カウンターでのやりとりを見ていると、珈琲に通じている人をよく見かけるようになった。
スペシャリティコーヒーは、情報を持てば持つほど楽しいという側面もある。もちろん、出す側としては、何も考えずに飲んで欲しいのだが、店を通じて文化を広まっていく様子が見てとれた。
なにより、夜の〈No.13〉は、社交場のようで楽しく、コミュニティを形成しつつある。〈hatis AO〉と共通のお客さんもいるし、このまま大きな広がりができればと思う。
1年で、店は大きく変化した。珈琲の味つくりをとっレンジが広くないても、オープン当初の尖った感じがまるくなって、レンジが拡がった。
器具も日々かわっていく。道具が変わると、こうも出力の結果が変わるのか、ということを教えてもらった。
次の1年の変化のことを想うと、いまから楽しみにぬってくる。ウチもそうだし。野口さんとはお互いに平日働いているが、今年は飛躍して、やりたいことに365日集中する。
野口さんは先に進んでいるが、お互いに、好きなこで食べていく、という夢の境界線にいる。後も少しなのだ。共闘関係でいらればな、と思う。野口さんは浅煎り、私は中深。
私は、過程が好きなので、夢に向かっていく日々を、関わってくれる人とたのしんでいきたい。
いままでしんどかったけど、さいきん、たのしい。みんなで祝いに行きましょう。