湘南移住記 第197話 『カットされたスイカ』

土曜日。朝起きると、窓の向こうから重い大気が伺えた。肉体にのしかかってくるような灰色の曇天。蝉たちは天気に構わずに多重的に鳴いている。彼らの命は地上に出てからわずか一週間しかない。

朝イチ、15分ほど瞑想して作業の順番を考えた。工事現場で働いてた誰かが、朝にすぐに動かず、順序を考えてから働いている人の方が仕事が早いという話を思い出したからだ。

アンティーク


先にご飯を食べて、横須賀中央方面に内装につかう備品をさがしに行った。

だが、これが間違いのはじまりだった。

さるラーメンショップで食事。ここのラーメンは美味しいのだが、食べてからどうも体の調子が悪くなってしまった。

横須賀中央の〈リサイクルショップきらら〉で1枚50円のタンゴのレコードを買った。店のレコード棚に飾るもの。女性のジャケで、中にはいっていたスリーブも飾ることにした。雰囲気がビル・エヴァンスの「Moon Beams」に似ている。

また、気になる珈琲茶碗も見つけてしまった。皿つきで1客あたり250円。だけど、6客しかないんだよなあ。全て同じものに統一しなくてもいいのだが。

今日の横須賀の街並は静かだった。だれも住んでいることを忘れているかのような光景だった。なんでだろう。

ホームズで棚受けを購入。一度戻って作業をしてから、上町のアンティーク屋を4軒巡った。

1番良かったのは〈渡辺園茶店〉さん。上町で古くから続いているお茶屋さんで古道具も取り扱っている。世界観がとても素晴らしい。古く、小さなビンや、苔が置いてある。

この細かい作りは見習おう。

世界観の見せ方。

昭和に作られた、青い小瓶を買い求めた。小指くらいの大きさのもの。こういう小さいものでしあげていく。

他の店で戦前のポストカードなどいくつか買う。品物いくつもあるのでキリがないが、さわった瞬間に電撃が走るもの、のみ買うことにした。

結局、然るべきタイミングでくるものはくるし、欲を出しすぎると本来の自分から離れてしまう。不思議なことにそういう風にできている。

改装工事をしようとしたが、思うように進まなかった。体がしんどい。朝考えた順番通りにもいかなかった。どうにもしまらない1日になってしまった。

調和とバランスと


それでも、客室の仕上げと片付けをする。出していた畳を物置にしまう。重い。

5月のプレオープンのときに手に入れた黄色い生花が勝手にドライフラワーになっていたので、額にかざった。額が二つあるので、どちらも同じドライフラワーを飾り、関連性を持たせる。

調これが欲しい、と思っても店に調和しないと意味がない。

青い小瓶には庭に生えていた白い花を活けて、テーブルに置いた。

岡山の〈belk〉をリスペクトして、テーブルに木の枝を飾ることにした。大きめの花瓶を三春町のハードオフに探しに行く。候補がいくつかあったが、即断せず。

内装がある程度固まってきた。店をしながらブラッシュアップしていくとして、細かくモノを揃えていくのは楽しい。


ラーメンのおかげか腹が減らず、スパイスカレーの作業はしなかった。その代わりバリ島の焙煎をし、水出し珈琲にする。

外食が増えているから気をつけないと。自分でつくったほうが栄養的にいい食事になる。健康は、行動力の素。

明日は庭の草刈りの手伝いがきてくれる予定。厨房の掃除の件は連絡が行き違いになっていた。

片付けながら、いままで相当に焦っていたことが俯瞰できた。落ち着いて取り組む

それでも、あきらめずやっていれば前に進める。

帰り道、三春町のセブンイレブンで広瀬さんに会いに行った。広瀬さん会を7月にやったのだが、続編が9月にあることを伝えに行く。広瀬さんに会いに行っただけなので、特に欲しくもないジャスミンティのペットボトルを買った。このセブンイレブンにはカットされたスイカが売られていておもしろい。