Miyatani Daisuke 『mellow』

Ambient

Mellowという言葉には、海が含まれている。

ヒップホップの曲調を現すときに、かつて「メロウ」という言葉がしばしば使われていた。今ではもう、あまり見かけなくなった。

落ち着いた、美しいビートの曲を総称する。Nujabesや、DJ Mitsu The Beatsの曲にも雑誌でこの形容をよくされていた。

10代後半は、メロウなヒップホップ曲を探したものだった。

Mellow、それぞれ


芳醇。熟した果実。

英和辞典で調べると、この言葉はこういう意味だった。自分が抱いていたmellowのイメージとは違っていて、chillと同じく、音楽的なスラングであることを知った。

Miyatani Daisukeは、兵庫県にある淡路島出身のアーティスト。日本神話では、淡路島が日本で最初にできた土地でもある。

ギターを奏で、アンビエントミュージックなどの作品を発表している。2007年に1st Alubmをドイツのレーベル、ahornfelderからリリースした。

『mellow』は2021にリリースされたシングル。

光の粒が反射して通り過ぎていくような、素晴らしい曲。

この1年、アンビエントの曲をよく聴いた。リリースも多いが、どの曲も似たような定型で作っていて、するりと零れ落ち、記憶に残るアーティストがいなかった。

この曲はどうも心に残った。だから文章に書いて残しておこう、と思った。

おもしろいと思ったのは、私が抱いていたmellowのイメージとも、辞書で引いた意味とも、曲の印象が違うこと。

この人はmellowという言葉をどういう風に捉えているのだろう。

mellowは海を連想させる。Nujabesのメロウな曲群は、鎌倉・由比ヶ浜の近くにあったスタジオで制作されていたから、海からの影響があったんじゃないか。

「Beat Lament World」を海で聴くときに、とてもしっくりくる。

由比ヶ浜に〈Good Mellow〉というハンバーガショップがあって、お店と場所の心地よさをよく現した名前だ。Nujabesも生前、あのお店で時間を過ごしたのだろうか。