湘南移住記 第186話 『漢方』

入院を回避する方法はないものだろうか。時間もお金も節約する方法。

3日も入院すると入院費もそうだし、3日稼働分の33000円が損になり、トータルで100000円分の損にはなるだろう。

とはいうものの、体調が戻らなければ何もできない。まずそこからだ。

調べてみると、久里浜に漢方内科の病院があった。漢方かあ。今の食養生の考え方に通ずるし、興味があるので行ってみることにした。

久里浜へ

休日の火曜日。堀之内駅まで歩いて行き、久里浜駅行きの電車に乗り込んだ。


県立大学駅と堀之内駅の半ばから見える風景

久里浜はJRの始発駅ということもあり、街が栄えている。郊外によくある大型スーパーもあれば、個人店が連なる商店街もある。

Googleマップで場所を特定し、漢方内科病院に着いた。大きい道路沿いだった。

朝10時ごろだったが、患者はわたしだけだった。受付のアンケートに尿管結石、慢性疲労、と書いた。尿管結石は泌尿器科にあたる。漢方内科だったが、尿管結石も診てくれるそうだ。

すぐ処置室に通された。六畳程度の広さで、ベッドと、先生のデスク。病院の、よくある光景だ。デスクの上には精巧な人体模型があった。ホームページで見た温和な先生ではなく、すこし神経質そうな先生だった。

椅子に座ると、3月の発症からの経緯をこと細やかに聞いてきた。パソコンに病歴を打ち込んでいく。タイピングは遅かったが、この人は時間がかかっても着実にひとつひとつ仕事をしていくタイプだとわかった。ホロスコープ的にみると、おそらく土系だ。

壁には京都大学医学部の卒業証書と、臓器の関係を五芒星で描いている図があった。土や火など自然の五元素を五芒星で説明する図はよく見るが、臓器にもあるようだ。

触診などは普通の医者と変わりはないが、舌を見て病状を判断した。舌の奥が黄色くなっている。これは私の腎臓が悪くなっていることを指すらしい。

結石なので膀胱が悪いと考えていたが、膀胱につながる腎臓が悪いようだった。

もう一つ驚いたのが、尿管結石に左右があることがわかったことだった。確かに、最初に尿道結石が出た時、左下腹部に激痛が走った。

腎臓から膀胱まで、尿道は左右2つに分かれている。左が痛い、ということは左側の尿道に結石ができているということ。

過去に行った病院は、このことを教えてくれなかった。

処方された薬

処方して頂いた薬は四つ。

一、〈猪苓湯〉。結石を排出しやすくする薬。残尿感にも効き目がある。

ニ、〈補中益気湯〉。5、6年は続いている慢性疲労への処方。この薬は嬉しかった。

体に足りなくなった「気」を補填してくれる効果をもつ。一緒に住んでいた元パートナーに『いっつも疲れてるって言ってるね』と教えられたことがある。別の人には考えすぎているから、と処方されたことがある。あれこれ考えないことを意識する。とこの薬で治るかもしれない。

三、〈消風散〉。皮膚炎に効く薬。私は先天性表皮水疱症という難病(国内に300人しかいないらしい)で、乾癬が脛と腕に出ている。アンケートには書いていなかったが、先生が私の腕の乾癬を見て、ついでに処方してくれた。

ステロイドを処置されるのを避けて放置していたが、まさか漢方に効く薬があるとは思わなかった。

薬の名前は効き目を現しているのだろうが、皮膚炎を風と表現しているのが面白い。

四、〈ウロカルン〉。これだけ錠剤。ウラジロガシという植物をベースにした薬で、結石そのものを溶かす効果のある薬。

こんな薬があるなら処方してくれればよかったのに。これなら手術しないで済む。

『漢方は万能ではない』と先生はおっしゃっていたが、どうもこちらの方が信用できそうだ。

hatisを開ける前に右腕を怪我して津山中央病院で手術をした。右中指にしびれが残って、1年で治りますよと言われたが、2年経っても動きづらい。それどころか、人差し指の効きも悪くなってきている。

人によるが、お医者さんもお医者さんで商売だ。

帰りに、久里浜の〈ひさご寿司〉でランチをする。ひさしぶりの贅沢。

これと茶碗蒸しとお味噌汁がついて1200円。マグロが美味かった。
久里浜駅から北久里浜駅まで歩いた。衣笠までの分岐点にあたる、湘南橋までの陸橋。

調整

さいきん、食事も工夫をしている。玄米で体調が崩れている可能性もあるので、7分付きの米に変えようとしたが、いつも買っている上町の米屋さんが精米に対応してなかった。

タイミングよく、実家の母が白米と野菜を送ってくれた。母の日に〈ブーランジェリールメシエ〉のクッキーを贈ったので、そのお返しだろう。また横須賀のいいものを贈る。

お返しだとキリがないので、自分が贈りたいものを見つけて好きなタイミングで贈ることにする。

玄米をそのまま炊くのではなく、17時間浸水して玄米毒を解除して食べることにした。

また、分づき米もとりいれることにした。足りない栄養素は、雑穀で補う。

漢方を飲んでみたが、甘かった。精製糖が含まれているのではなく、甘草が入っているからだ。

少しずつ体力と気力が戻ってきた。昨日は、ひさしぶりに、なにかしたい、という気が湧いてきた。文章を書く気にもなってきた。

休みの日は休んで庭仕事をして、庭を眺める。夜には鈴虫たちが美しく鳴いている。素晴らしい家に来た。

庭に生えている雑草で、独特の香りがするものがあった。調べてみると、ドクダミだった。利尿作用があるというので、干してドクダミ茶にして飲んでいる。