横須賀、米が浜通り。昔ながらのスナックや、イタリアンバール、カレー屋、ケーキショップや、食材の卸屋が立ち並ぶ。横須賀中央駅から東側にある通りだ。
老舗の自家焙煎珈琲屋〈コンティニュー〉の裏手に看板も出さず営業しているラーメン屋がある。〈煮干平八〉だ。横須賀の人気店で、客入りが多すぎて今の場所に移転したらしい。
このお店は、意欲的なメニューを出している。Twitterには、『牡蠣そば』や鰆を使ったラーメンなど、見慣れないラーメンが多い。
店の改装を休憩して、富士見町から歩いて出かけてみることにした。

昼間の横須賀
2ヶ月ほど鎌倉に働きに出ていて、昼間の横須賀はあまり出歩いていなかった。
横須賀の街並は、海側の埋立地と山側の旧市街に分かれる。迷宮のような山側の街とちがい、整然と道路が敷かれた埋立地方面は、海が程よい距離にあって、歩くと気持ちがいい。
二月、まだまだ冬の寒さが厳しいが、春の兆しがところどころにある。迷路のような三春町の住宅街の途中に、梅か桜の花が咲いているのを見かけた。

海風が体を通り過ぎる。かつて住んだ神戸の感覚に似ている。神戸駅から元町にかけての抜けのよさ。もちろん、盆地にある津山にはこの風は吹かない。

正午前、〈煮干平八〉に到着。店は満席で、大将に「ちょっとまってください」と告げられた。食券機の前で待つ。牡蠣そばが食べたかったのだが、今日のメニューにはなかった。代わりに、『あん肝どS』なるメニューを見かけた。物珍しいので、これを注文することにする。
5分ほどして、席が空き、食券を渡す。店内のほとんどが30,40代以降の男性だった。私が着席したあと、何人かが入れ替わり立ち替わり入ってきたが、大将とのやり取りから察するに、常連客が多いようだ。地場の力があるということ。
しばらくして、あん肝どSと、ライス、壺がサーブされた。壺の中身は紅生姜だった。
博多ラーメンのような細麺に、あん肝を使った濃厚なソース、チャーシューが2種。発想がラーメンというか、パスタに近い。上町のラーメン屋〈魚焚〉の牡蠣まぜそばもそうだ。
よくかきまぜて、一口。うまい。濃厚。どろっとしたあん肝のソースに、細い麺が絡まり合って、凝縮した旨味のアンサンブルが産まれている。正方形に切られた玉葱がいい仕事をしていて、さっぱりとした酸味と塩味をもたらしている。これは美味い。
津山から出てきて驚いたのが、ラーメンの濃厚さ。津山は昔ながらのストレートな醤油ラーメンが多い。関東圏の煮干のエスプレッソのような風味には感動を覚える。
特に〈魚焚〉の牡蠣まぜそばは虜になっている。平打ち麺、クリーミーで汁なしと、私の好きな条件をすべて満たしてくれている。
麺を食べ終わったあと、ライスと紅生姜をあん肝に混ぜ、食べる。これがまた美味い。
新作が次々にリリースされているようなので、皆さんも是非。
- 煮干平八
- 神奈川県横須賀市米が浜通1-17
- ☎︎046-897-3104