湘南移住記 第110話 「塗装」

床の貼り付けに飽きたので、塗装の作業も入れる。店名を「hatis S.H.E」にしようと思っていたが、「hatis AO」にすることにした。なぜかと言うと、すでに壁に青の珪藻土が塗られていて、部屋を真っ青にするといのではないかと思い立ったからだ。

AO

ホームズ横須賀店で青色のペンキを買って、ベンチと床を塗る。ベンチは前の住人が作り残していったもの。11月だが、横須賀はまだ日中寒くないのでペンキもよく乾く。無心に青に塗りつけた。

どうも私はペンキ塗りが好きなようだった。やっていると気分が楽しくなる。

部屋の半分まで塗った。改めてみると、どうもやりすぎなように感じた。空に溺れるような感覚になる。お客さんは落ち着けるだろうか。

和室を改装しているので、部屋には和の要素が色濃い。木枠の格子窓の設えもいいし、天井に木が放射状にしている細工もすばらしい。

ガスの開栓に来た作業員の方が、元々この家を所用していたおじいさんを知っていた。おじいさんは、天井の細工をよく自慢していたそうだ。ホームに入ると同時に、この家を手放したらしい。この天井も、多くの人にみてもらいたい。

新しい

横須賀市から新規創業で補助金が出るかもしれない。インスタでその情報を三浦の方から教えて頂き、横須賀商工会議所に通っている。担当のOさんは、スパイスカレー好きで、補助金の案件以外にも相談に乗ってもらっている。

申込書には創業の動機を書く欄がある。動機が薄いと言われた。その時、私は岡山や鳥取に、東京圏から地方に移住し、空き家を改修し、あまり街ではない場所で店を始める人たちがいたことを話した。

私は逆に、地方から東京圏から来たが、同じような感覚だった。三崎には東京からの移住組が多い。横須賀もかなり街だが、空き家がかなり多いので、この感覚で店づくりに取り組めるのではないかと考えた。

Oさんは移住の事情を知らない。話を聞いてもらうと、そのストーリーはいいですね、と言ってもらえた。融資を受けず、空き家を自分で直して魅力的な店ができれば、新しいモデルができるかもしれない。

モデル

申込書に書く文章の下書きをみてもらったとき、Oさんからオープン前から富士見町の地域と連携を取った方がいいと助言された。

私と横須賀はまだ繋がりが薄い。hatis 360°はオープンしたとき、地元で知り合った人が来てくれたので、最初はすこし忙しかった。

DIY作業の準備に追われていたので、そこまで思い至っていなかった。幸い、衣笠公園で朝から子供達がゴミの収集作業をしているのを見たので、地域の交流はあるようだった。津山駅前にはもう町内会の活動がなくなっていた。

他にも、お店に顔を出して、覚えてもらうこと。こちらに来てから横須賀で店をやるんです、と飲食店で自己紹介してきたが、ショップカードがいるかもしれない。

お店のオープンに、近づいている実感。積み重ねた行動がようやく実を開きそうだ。