いつ頃からか、音楽そのものだけではなく、音響も好きになった。これでもDTMの端くれなので、音の鳴りには気を配っていた方だ。
新神戸にあったBar Incに、銀色に輝くスピーカーに見惚れた。Altec 612、俗に言う銀箱である。音云々より、造形が好きだった。
それからJBLのスピーカーはやたらいい、と気になるようになる。というか、自分がいいと思ったカフェや飲み屋に置いてあることが多かった。
ハイエンドの機器を持っているわけではないし、そこまで知識があるわけではないが、いい音では聴きたい。転じて、店でもいい音で時間の質をよくしたいという欲望が出てきた。
中学のころ、弟が津山口の地域祭で当てたコンポを奪って以来、自分のミュージックライフが始まった。高校のころ、友達にMDプレーヤーを譲ってもらい、音楽を外に持ち出せるようになった。
大学生の夏休み。商店街の和菜美で2ヶ月バイトして、初代のiPodを買った。画面がまだモノクロだった。50,000円はしたと思う。弟が羨ましがって、買っていた。
その時期、1番多く音楽を聴いたかなあ。音楽のデータを集めて、iPodに打ち込んでいた。データを収集する楽しみもあった。その頃は1000円くらいの、安いイヤフォンを使っていた。音質の差があるとは知らない時代。綺麗な音があるとは知らなかった。
その頃、タワレコが提携していたNapsterという、サブスクの走りのサービスがあった。
横行しまくっていたp2pソフト(音楽や映像ほデータをユーザー同士でタダでシェアする夢のようなソフト)に対抗するソフトだった。私も高校の頃からWinmxを使っており、小遣いが少ない中、相当音楽を聴いた。だから同世代より、聴いた音楽の量は多かった。
現在。サブスクが定着し、音楽の価値は水より安いものになった。音楽の供給量が多すぎるのもあるが。しかし、人間が作ってきた音楽のアーカイブをほぼほぼ聴けるというのは、この時代に生きる者として、恩恵の一つではあるだろう。
私はSpotifyをメインに使っている。理由は、音楽好きがつくったサービスだからだ。
イヤフォンは秋葉原で買ったInair M360。「世界一小さいスピーカー」というコンセプトの日本製のイヤフォン。音場がとても広く、音がどの位置に鳴っているかとてもわかりやすい。もはや従来のイヤフォンではなく、新しい体験をしていると言って過言ではないだろう。
これでアンビエントやニューエイジを聴くと、奥行きがとても楽しい。左右にぐわんぐわん揺れるし、いままで聴いてきた感覚とは違う。このイヤフォンで昔聴いていたヒップホップを聴いてみると、ミックスがのっぺり平坦としていることがわかる。自分が作るときも気をつけねば。
Spotfyの環境設定で小音量に設定して、小さく鳴らしている。昔は大音量で入り込んでいたが、耳が痛くなるし、中毒的になってしまう。ヒップホップって、そういう音楽だなあと改めて知る。
例えば、今は菊池桃子の「Adventure」というLPを聴いている。Light In The Aticcからでた再発で、リマスタリングが施されかなり音がいい。この辺りのシンセは音が綺麗で、小節のケツに入るピアノとかすごい美しい。キックもただ全面に出すだけではなく、少し奥まった辺りに置いている感じも面白い。作り手の工夫と意図が感じやすいのだ。
人生の楽しみが増えている。集中して聴くと、こんな面白いことはない。これからinairに寄せて、音楽を追及して楽しんでみる。