丹後山アパートメントに、不思議な紙があった。京都から来た2人が毎月作っているフリーペーパーが挟んでいるファイルにその紙は入っていた。なにやら、文章が羅列してある。管理人のナルちゃんによると、ACKOさんという、フェスによく現れる有名人が書いたものらしい。
愛、宇宙
それは「アミ 小さな宇宙人」という本の要約らしかった。エンリケバリオスという作者によるもの。やさしく語りかけるような文体が、胸に響く。気になることがたくさん書いてあったので、抜粋して要約します。
•人生とは 今を充実させるほかに目的はなにもない
•人生が提供してくれたすべてのものに注目してごらん たえずいろんな発見ができるよ 頭で考えるのではなく心で感じることだよ
•頭は考え 胸は心 頭は心に奉仕しないといけない
吉田省吾がある晩、丹後山アパートメントで人間最高説について語っていた。自己肯定はできているだろうか。生活の忙しさにかまけて、心がおざなりになっていただろうか。
コントロールは傲岸
また、その夜に自己責任という言葉について話し合った。僕はとあるサイトで見た、自己責任100%論について聞いてみた。それは、起こったことはすべて自己責任によるものという考え方。悪いことがあっても人のせいにしない。そうするとラクになる、というもの。
みんなに問いかけてみると、違うという答えだった。たしかに人のせいにしてはいけないが、起こることすべてを自分のせいにしなくてもよい。その答えを聞いたとき、またラクになった気がした。自己責任100%はどうも極端だったのかもしれない。
窯に向き合うことで
とある陶芸家に話を聞く機会があった。その方の作り方だと、これを作ろうと思って作るわけではない、窯の機嫌もあるし、自然や、自分の体調や気力の波もある。そのときそのときでできるものを作る。窯をコントロールすることはできない。
荒々しさや人間古来の力強さを感じさせるその方の作品は、説得力があった。
昔、ジョンキムという人の「媚びない人生」という本の中に自分の心をコントロールしないと、物事の本質を見極めることはできない。という箇所があった。また、仏教関係の本にも、つねに自分の心を見張っていなさい、と書いてあった。
俯瞰で自分の心をみるとき。いらだっているな、とか、喜んでいるな、とか。気づくようにすると、少しずつ周りの反応も変わっていったような気がする。臆病なので人の顔色を伺っていたが、人もこちらに気を遣ってくれている、と気づけるようになった。
物事すべては思い通りにはいかない。コントロールできない。たくさんの要因がある。自分の心もそうで、意外にちょっとした機嫌の波がある。わからない部分もある。陶芸家の話を聞いて、すべてコントロールするなんて傲慢ではないか、と思い浮かんだ。ただ、感情の波に飲み込まれず、一つの線で捉えてられたら、いいことになる。
吉田はマインドゲームと表現していた。心の捉え方ひとつで世界が変わる。時間は有限だ。限りある人生を、よく生きるには視線の変化が必要なのかもしれない。