鎌倉Taraveling ⑤ メロウな葉山

楽しいゲストハウスの夜ののち、二日目の朝。朝七時ごろにスッキリ目覚める。いつも寝起きは体がだるいのだが、いても経ってもいられないほど体が元気だ。朝の準備をして、鎌ゲスでレンタサイクル(1日800円)を借りて出かけた。目指すは葉山。今回はどこにいこうと何も決めずに来たのだが、実は一カ所だけ行きたいところがあった。それはTomorrowlandが経営しているCavonというカフェ。&Premiumの「メロウな場所」特集に掲載されていて、以来どうしても行きたかった場所だ。中学生の時分より「メロウ」という言葉に弱い。Mellow ・・・豊かで美しい、芳醇な、という意味。僕はヒップホップ経由でこの言葉に出会った。ヒップホップで曲の特徴を現す形容詞に「ドープな」「ジャジーな」といくつかあるが、その中に中学生の頃にヒップホップに出会い、聴き進んでいく内に、自分が好きな静かな曲は「メロウな」と形容される曲が多いことがわかった。そもそもヒップホップが好きなのも騒がしくないからという理由なので、静かな曲がよかったのかもしれない。ヒップホップというとギャングスタなものや、ワルい人たちの音楽であるし、かっこいいものが多い。が、僕が惹かれたのは哀しさであったり、寂しさだったのかもしれない。

自転車にまたがる。気持ちいい。鎌倉の山を駆け抜けるのはとても気持ちよかった。朝の太陽が透き通る。坂道をくだり、梶原から長谷まで出て、そこから葉山へ。ひたすら海岸線を自転車で行く。生きてる感じがする。潮風を浴びる。鎌倉海岸?から向かって左へ逗子方面へ進むと、鎌倉に比べ少し寂れた感じがする。逗子に入ると鎌倉と明らかに空気感が違う。逗子のほうがどちらかというとウォームで、懐かしい感じがする。これは感じ方がそれぞれだろうが。

昨日、江ノ島でiPhoneの電源が切れた失敗を糧に、今日はあまりiPhoneを使わないことにした。ていうか、直感に従ってたほうが旅がよくなる。これは今回の旅で学んだことである。僕は行きたいとこに行けない運があるいみたいだ。よしんば行けたとしても、鎌倉の有名店は観光客で溢れかえっていて落ち着かない。僕は望んでいるのは地元の人が生活の上で利用しているような場所なり風景だった。そういうところのほうが気分が落ち着く。

google mapsを頼りにせず進んで行くと、なぞのビーチに出くわす。ここで小1時間ほどボーッとしてたかなあ。この「海で一人でボーっとする」時間のなんと幸せなことか。時間を、本当に自分のためだけに使っている感じがする。地元のおっさんらしきおっさんが2人海で何かをひろっている。それをもってきた手帳に絵にする。波の音が遠くまで響いている。時間がゆっくりすぎる。

逗子まで出て、葉山に入ったころだろうか。岡山でいうと久世みたいな町並だった。調べてみると逗子は人口6万くらいと、10万の津山よりさらに小さい街だった。鎌倉市は17万。けっこうでかいのか。でも都市っていうより田舎だ。しかし洗練され具合が都市以上、みたいな田舎。こういう田舎だから人は集まってくるのか。津山を人が集まってくる田舎にしようとすると洗練が必要になってくるのかもしれない。

途中、左右別れた分岐点があってgoogle mapsをつかって進んだが、その道が間違ってたというアクシデントが起こった。結局最初に直感でこっちだという道が合っていた。こういうことが非常に多かった。焦りすぎていた。いままでの人生もそうだったかもしれない。仕事のことで、どうしても避けられない分岐点にたったとき、やむなく、、、とあまり気乗りしない方を選んだことがある。その選択をいくつかしたときボロボロになってしまった。あのとき焦らず自分が納得できる選択をしっかりしていればな、という後悔が残っている。後悔は最大の警告だ。今回も直感に従うかどうか、が大切だった。調べていくより、たまたま通りがかった店やスポットがよかった。今回の旅に関しては、なにも起こらないこともよかった。パーフェクトにはいかないだろうが、何か学ぶのも旅なんだな。

葉山入りしてからはペダルハイに陥り、ひたすら海岸線をこいでいた。気がつくとCavonを通りすぎていたので、引き返して戻る。葉山は逗子よりもさらに田舎だ。だけどスタバが入ってたりおしゃれなお店が多そうだった。あと、漁村ですな。海岸の漁業感がどこよりも強い。

Cavonに着く。なんて説明したらいいかわかんないけど裏手のほうだった。この辺は良さげなホテルが多い。リゾート地ぽい。Cavonは大仰な扉の奥に入った。入るのをやめようか、、と思ったくらいの扉だった。しかもチャリを止めるところがない。今思えば店の人に行ったら中に停めさせてくれたのかもしれないが。中に入って庭があった、階段を登って行くと、出た!雑誌でみたあのねっこがれる白いソファベッドに、見渡す限りの海岸。そしてDJブース。最高やないすか。お客さんはカップルしかいなかったけど、一人でバーンっていっちゃう。ていうか一人でまったりしたいメンズもいいですよこれは。インスタ映えだけではもったいない。

雑誌に載ってたDJやってそうな外国人のおっちゃんが接客してくれた。まず席を決めてそっから注文するスタイル。事前の調べで飲み物だけの注文だとイス席の案内だが、ちょっと空いてたのでソファベッド席に通してくれた。こんできたのでイス席に後で移動したけど。

気がついたけど、思ったより手作り感がつよい。看板もメニューもボードデッキを黒板にして書いたものだし、ランチもひとつひとつ手作りと書いてある。自分もカフェを作ろうとしているので、これは参考になった。DIYでここまでもっていけるのか。センスとアイディア次第ちゅーこっちゃな。

パイナップルビール(1000円)を頼み、しばしまどろむ。屋外で酒をのんで音を聴くというは最高だ。できればこういう環境で仕事していたい。そういう人もいるんだろうな。外国人のおっちゃんが渡してくれた店がつくった雑誌を読んでみる。創業者の葉山への思いが書いてあった。どうも南仏、プロヴァンスあたりに葉山は似ているらしい。掲載されてあった写真を見て驚いた。こんな田舎にプロヴァンスみたいな光景がひろがっているのか。心地いい風景、場所というのは神戸でさんざん味わさせてもらったが世界はまだ広い。まだ行ってないところが多すぎるわ。もっと行ってみなあかんな。

Cavonを出て腹が減ったので地元の家族や肉体労働者が行きそうな中華屋に行く。昨日からどうもラーメンがくいたかった。Cavonとはほど遠いフッツーの中華屋だった。なんか雰囲気はあった。肉体労働者5〜6人が麻婆豆腐とか注文している。ラーメンを注文しながら待つ。葉山や鎌倉の雑誌を見る。森に家を作って、外にトイレがある人とか、いろりを作って暮らしている人が紹介されていた。この地域はほんとの意味で生活レヴェルが高い人が多い。モノに溢れていることが豊かという価値観ではなくて、そこにあるもので日々を大切にする、高めて行くという思考がありありとわかる。自分も目指しているのもそこだし、願わくば世界全体がこうなってくんねえかないう思いがある。日本の伝統的な価値観はそれに近い。経済的にはこれから落ち込んで行くのが目に見えているから、モノがあることが豊か、やたらみんな東京に集中する価値観は手放してほしい。という動きをやっていこう。

そのまま自転車で走る。しまいには横須賀市に入ってしまった。横須賀市にはいったああたりの海岸でまたもやまどろむ。まどろむのサイコー。海辺のイタリアンの店も気になったがラーメンを今しがた食べたところだった。途中美術館があってムナーリ展をやっていて気になった。

ここから折り返して山側方面から鎌倉まで引き返す。途中よさげなカフェとかあったりしたな。街の本屋さんとかあって、葉山〜逗子あたりはちょうどよい街並だった。ここに移住するのもいいな〜。早くパソコンひとつで仕事できるようになって、こういう居心地でいい環境で生活できるようにしたい。

途中で歩行者は行けれないトンネルがあって、そこで便意をもよおしピンチになる場面があった。やむなしかと思ったものの、思いとどまって海岸線のトイレまで我慢した。後で聞いてみるとそこは地元でも有名な心霊スポットだったらしく、いろんな意味で危ないところだった。